始まりの街 アンファング SS 「Magus Pride」 著者:dog

始まりの街 アンファング SS 「Magus Pride」 著者:dog始まりの街 アンファング SS 「Magus Pride」 著者:dog

とある魔法使いが、始まりの街へ来る前の物語。
何故魔法使いがアンファングへやってきたか・・・
旅立ちの物語であり・・・
何より 詳しい詳細は省くが
ウィズ=メイガスが家も仕事も貯金も無くす物語である

― 旅 路 ―

草木は見えず、枯木と赤い大地が広がる荒野を一人の長身の男性が道を歩いている。
遠くに見える山々はどれもこれも岩山であり、見える命と言えば
上空を飛ぶ、ハゲワシだけだ。

腐肉喰らいを除いた唯一の生命たる男性の名前は ウィズ=メイガス。旅の魔術師である。
幾つかの小袋を体に巻きつけ、夜を切り取り作った様な黒いローブに身を包んでいる。
その手に持つのは、一本の杖。そして方位磁石だけである。

長大な魔術杖“マナ・スタッフ”は、旅の道中歩行を補助する為に、先端を革で補強しており
それも、色合いが禿げながらも杖と馴染んで見える事から、長い間使っている事が分かる。

ビュウウウッと、つむじ風が砂埃をパラパラと巻き上げウィズはローブを深く被る。
煙たさは旅の常だが、歓迎したいとは思えないモノだ。

だが、この道の先にある村にどうしても行かなければいけない理由も。又あった。
食料が心許ない事を気掛かりにしながらウィズは歩く。脚の疲れは確かにある。
だが・・・今日の夕食で、保存食が尽きる以上。脚を止める事は出来なかったのだ。

― 暴 虐 ―

ウィズの記憶ではこの周囲一体は大変肥沃な大地であった事を覚えている。
畑や田んぼがそこら中で日々の糧を創り出し村の奥にある森は美しい緑を成していた。
活力に満ちた村人や動物達。少し遠出して森に行けば下位の幻獣を見れた程に

この周囲一体は素晴らしい自然に満ち溢れていたのだ。

森の湿気あれど栄養があると錯覚する程、濃厚な空気は
荒野の、煙たさと、命を感じない軽々しい空気へと変わっていた。

小動物が植物を食べ、小動物を大型動物が食べ、彼らも死骸で森を潤す。美しい循環は
唯、腐肉喰らいが喰らい合うだけの何の感慨も無いモノへと変わっていた。

美しい記憶は、先日とは言えないウィズが子供の頃の話だ。
だが、逆に言えばそんな程度の時間で此処まで大地が自然と変わる筈が無い。

何があったのか・・・・・・村はどうなっているのか。
疑問に思いながら進んだ先に。確かに『村はあった』・・・あっただけだ。

働き者の男達が威勢の良い声を張り上げ、弟子達が目を皿にして見つめる光景は無い。
女達が、力を合わせ家事をする姿も。元気に走り回る子供達の姿も無い。

あったのは・・・・・・・・・痩せ細り、死んだ目をしている。村人達だけだ。
ボロボロの服を着て、ウィズを見て訝しげにして遠目に見る村人達。

店先に置かれているのは。何もない。店に文字通り【何も無いのだ】。
村人に話かけてみるも・・・・・・やはり商品は何も無いらしい。

重税か?と聞くと違うと答えが返り、何があった?と聞くと首を横に振り
後は無言でフラフラと何処かへ歩いて行った。

「・・・ッチ。何があったんだ」

ローブの下で、口汚く罵るも、腹の減りは解消されない。
今から森に行き狩りに行くか?と言われても。狩りの知識等無い。
上手く行くか怪しい所だった。

そうして立ち尽くしていると・・・・・・

「若いのが、こんな死んだ村に何の用があるってんだい?」

後ろから嗄れ、健康とは言えずとも凛とした老婆の声がした。
振り返り見ると・・・・・・。粗末な格好なのは変わらないが
杖を手に。白髪を後ろで纏めた。気の強そうな顔をした老婆が居た。

「旅人だが、此処いらに用事が合って来たが・・・食料も何も尽きてな」

そう言うと、納得した様に老婆は頷く

「此処いりゃにゃ、生きるだけで精一杯さ。それさえも覚束無いってのに」
「他人にやるメシなんざ無いよ。」

冷たい言い方に聞こえるが、唯事実だけを言っていると分かる。
言葉に何の含みも無いのが、良く分かる誠実な話し方であった。

肌は皺に満ち、白髪しか無くなろうと。その瞳は死んでは居ない。
腰は曲がらず、人間かくありけりと言うべき立ち住まいは見事としか言い様が無かった。

「何も無いなら森に行けば良いだろう?」
「それとも・・・何かお触れがあったのか?」

そう・・・・・・此処に来る前の道には植物も木々も無くなったが・・・・・・
今居る村から遠目に、森がある事が分かる。
2時間程の距離だろうか・・・?だが確かに緑はあるのだ。が――――

「別に、上様からお触れがあった訳じゃないよ」
「唯・・・、厄介者が移って・・・いや。帰ってきてね。アンタもさっさとこの村をでてった方が良い」

老婆は、僅かに滲み出す様に。そう言った。
親切と言える言葉だが・・・ウィズは首を横に振る。やる事があるからだ。

「殺されても知らないよ」
「それでもだ」

短的に、言い合うと老婆は、はぁ・・・とその様子に老婆は溜息を吐く。
くるっと、踵を返し。背中を見せて歩き出す。
暫くして立ち止まると・・・

「何やってんだい。早く来な!飯位、出してやるよ。」

老婆の言葉が、ピシャリ!とウィズの耳を叩いた

「食料が無いんじゃ「隠してるの位ある。一食位は面倒見てやるよ」・・・」

そう言った老婆の言葉に僅かに考える。
こういった、極限状態の村で旅人を襲うのは当たり前の事だ。
実際に過去に何度か有り、返り討ちにした事もある・・・・・・が

目の前の老婆程立派な立ち住まいの人間相手に、その様な事は思えなかった。
だからこそ・・・ウィズは。後ろを着いていくことに決めた。

 ― 事情聴取 ―

老婆の家は、補修等はされてないが。老婆一人で暮らしているとは思えない立派な家であった。
隙間風等は、有りそうだが清潔さが何故かあるのは、モノが少ないからか。

机程度しか無い殺風景な居間に座らせられ、暫く待つと老婆が一つの皿を持ってくる。
薄粥であるが・・・・・・、干人参や干肉の入った。村の状態を考えると上等過ぎる食事であった。

食べな。と顎で老婆はウィズを指す。老婆とウィズ。老婆の方は小皿だが
共に食べ始める。お互いに無言で有り。食器と皿が当たる音だけが響く。
久しぶりの暖かな食事にウィズは、ゆっくり口に含み・・・暫く咀嚼し、惜しげに飲み込んだ。

お互いに食べながら・・・老婆は口を開く

「此処いらには、大昔に一人の魔法使いが住んでいてね」
「私が子供の頃の話だよ。さっき言ってた森の奥に居たのさ」

老婆の目は・・・何処か遠くを見つめている。ウィズが瞳に入ってはいても
過去の・・・美しい森や平原。黄金の稲葉が生い茂る日々を思い出しているのだろう。

「陰気なのか、そうじゃないのか分からない変な人でねぇ・・・」
「全く村に寄り付かない癖に私達が困った時にフラっと来るのさ。」

「地震で村の家々が倒壊した時には、デカい化物が森から出てきて家を引っ張り上げたり」
「感染病が蔓延しそうになった時ぁ、村人全員に薬をくれたりしたねぇ」
「・・・・・・私ゃ、2、3回しか見た事無いけど。確かに助けてくれたんだ」

唯・・・、と呟いた老婆の言葉は・・・。始めて、疲れに満ちていた。

「変わっちまったんだろうね・・・。5年前に。森から来た化物は・・・」
「家を、立て直してくれた姿のまま。村を思いっきりぶっ壊して帰っていったよ」
「【次に来るまでに金を寄越さなきゃ、同じ事をする】って紙だけ置いてってね。」

ウィズは、無言で聞いていた。
井戸も枯れ果ててたのを知って、ウィズの持つ水袋から注がれたコップの水を僅かに口に含む。

「・・・あの魔法使いは。何かなければ村に来ないから・・・50年間、ウチらも会わなかったもんさ」
「今の村の連中は。私以外御伽噺だと思い込んでた程だからねェ・・・」

くつくつと笑うも、何処か寂れた笑い方だった。

「5年前からかね・・・。ゆっくり木々が枯れ果てて。魔法みたいに荒野になっちまったよ」
「あの、狂った森だけを残してね」

そう言って、窓の外に見える・・・・・・遠目に見える。
その魔法使いが居るであろう森を見る。

「植物がね・・・全部猛毒なんだよ。動物はそれ食っておっ死じまった。」
「水も、いつの間にか枯れ果てて・・・。ゆっくりここいらは荒野に変わっちまう」
「おかしな、円形の図形みたいなのがそこらかしこに描かれちまうのさ」

魔法汚染、そう、ウィズの喉元まで言葉が出る。
様々な魔法的効果により自然物に影響を及ぼし生態系を狂わせる現象である。
大抵は・・・・・・――――ロクでもない魔法を使う事で起きる。

「領首も居ない辺鄙な辺境で、冒険者を雇ってみたけど。死体で帰ってきた」
「若い奴らは、立ち向かって・・・ね」

ダメだったよ。そう呟き森を見る老婆の目には
不思議な色が見えた。

諦めにも似た。不屈にも似た。渇望にも似た何かが。

「ソイツの名は・・・?」

老婆が話し終える。事情は理解した。
どうしてこうなったか・・・となれば。納得が出来る。
そうして、漸く口をウィズは開いた。

「ん?あぁあの魔法使いの名前はね―――――」

キャァァアアアア!!!っと、外で悲鳴が轟く!!!
聞こえると共に老婆は跳ね起きて。ウィズの肩に手をやり立たせようとする。
鬼気迫った声と顔が。異常な事態なのだとウィズに伝えていた。

「~ッ。拙い。アンタ。逃げな!!!奴が・・・来たんだ!」

ウィズは、半日振りの食事に、ゆっくり惜しげに食べていた為
半分しか食べ終えていなかった。

だが・・・・・・どちらにしろ。老婆の行動ももウィズの食事も中断される

ズ  ド  ォ  ォ  オ  オ  オ  ン!  !  !  !  !

勢いよく扉が粉砕され、招かれざる客が乱入してきたからだ!!!!
扉が、反対側の壁に衝突し、一瞬でくの字に曲がり木っ端が部屋を舞う!
煙い、圧迫感にも似た匂いが鼻を着く。塵芥が呼吸と共に鼻の中に入った証拠であった。

見晴らしのよくなった扉の前に立つのは・・・拳を振り終えた格好の
真っ黒な。人型の肉の塊であった。

手も、足もある。顔らしきモノはあるが・・・・・・何もかもが黒に染められていた。
それらの太さはどれもこれも、人間の2倍3倍はあるだろう太さと頑強さを見せ・・・
逆に。鼻も目も無く。それらしき黄色の宝石が目玉の代わりにハメられていた。

3mに僅かに届かない程度の巨体がゆっくり室内に入ってくる。

「・・・“肉造人(フレッシュサーヴァント)”」

ウィズは宙を舞う木っ端を軽く手を振り払いながら呟く
ゴーレムに対し、咄嗟に席を立ち。老婆を背中に庇いながら敵を観察する。

黒に染められようと。その姿は・・・見覚えがあった。
肉で体を成し、仮初の魂と生存目的を与えられた魔法生物

「【フラービィーゴーレム】か」

操霊術士・・・ゴーレムを作成するモノにとって見慣れた姿がそこには見えた。
フラービィゴーレムが一枚の紙を老婆へと突きつける。
そこに書かれているのは、短い言葉であった。

【 季節替り毎 ガメル徴収 】

そう書かれ・・・下には。今の村では支払いきれない金額が書かれていた。
豊かな村で生かさず殺さず。何とか払えるかどうか。そんな大金である。

「ウチにはそんな金は無いよ!」

老婆が、ウィズの背中から飛び出し。勢いよく叫ぶ!
事実だろう・・・。支払えるなら、村の状況はもう少しマシの筈である。

「出ておいき!」

そう叫ぶ老婆に対し。ゴーレムは。ズゥン、ズゥンと腹の奥に響く音を鳴らしながら迫る。
ウィズは。唯そのゴーレムを見つめていた。

「ほら、アンタ。さっさと行きな。アンタも狙われるよ。アイツは・・・見境が無いからね」

老婆が背後で己を逃がそうとするのを感じる。だが何も答えず、
ゴーレムが、近づきながら拳を振り上げるのが見つめた。

近づくたびにその巨大さが分かる。天井に頭が擦りつけられる程の巨体である。
握られた拳は、人間の頭よりも大きい。殴られてタダではすまないだろう。
ウィズは。唯そのゴーレムを見つめ・・・・・・振り下ろされた拳に。一言だけ呟いた

「“■■■■■”」

振り下ろされた拳が、ウィズに迫る!!!
老婆が、目を閉じ、ウィズが潰れる音を覚悟する!!!が!!

何も・・・聞こえない。
肉が潰される音も、壁や床に叩きつけられる音も。
老婆がゆっくり目を開くと

そこに、ゴーレムの姿は無くなっていた

「・・・・・・やれやれ」

ウィズはしゃがみ、何かを拾いながら袋に詰めていた。

「婆さん」

立ち上がったウィズは、老婆へ振り返りながら淡々と言う。
破壊された扉から光が漏れ出し、ウィズを照らす。
その姿は影となり。老婆にはウィズの輪郭しか見えなかった。

「美味かったよ。ごっそさん」

机の上の器は・・・今の騒ぎでひっくり返っていた。

「腹ごなしに・・・飯の邪魔をしたクソ野郎を潰してくる」

背中を見せるウィズに老婆は口を開こうとし・・・・・・何も言えず目を見開いた。

― 魔 森 ―

遠目に見えた森へと近づくたびに自然・・・否。正しく言えば“不自然”が増えていくのを感じる。
紫色のツルと赤い花のうねうねと動く植物やら、秒間毎に色が変わる木々等だ。
当然、そんなモノ普通ではない。

ウィズは、幾つかの植物をナイフで切り裂くと調べている。

「・・・葉脈が魔法陣になってる・・・っつーとやっぱり魔法汚染か。クソったれ」

幾つか、大木の皮を剥いだり。魔法を唱える度に。眉を顰める

「・・・操霊術士として、笑えねえよ・・・・・・」

どうして、こうなったのか・・・。ウィズには見当が着いた。
過去に読んだ魔道書に書かれていた。とある魔法具の応用による現象と一致したからだ。
その技術の名は・・・

「笑えねえよ・・・」

穢れの応用、及び転化。 であった。
そうして調べ終わったウィズは、真っ直ぐ道を歩いて行く。

周囲には腐卵臭に近い匂いが立ち込める。薬品で嗅ぎなれた匂いだが
この腐った匂いにウィズは眉を顰める。人族として好ましい匂いでは決して無かった。

地面は木々の根っこがそこら中に走り。土が見えない程に大地を覆い尽くしていた。
踏む度に硬い根。柔らかい根の感覚を受けながら。真っ直ぐに歩き続ける。
こんな狂った森で一夜を明かすつもりはウィズには無かった様だ。

そうして、暫く歩き続け・・・開けた場所でウィズは。脚を止める。
そこは根が走らず大地が見える場所であった。

ウィズは、立ち止まると。地面に巨大な円形を杖で描く。
複雑な文字や、複雑な図形等もあるも。素早く的確に描いていく・・・それは魔法陣であった。
1時間程かかり書き終えた魔法陣の上に、体に括り付けていた袋を放り投げる。

「操“ダヴ”」

ヴヴヴ。と魔法陣から音が発され。青白い光が灯る。
それは、魔法・・・先程現れた【フラーヴィゴーレム】を生み出した魔法と同じ種別。
【操霊魔法】の魔力光であった。

《第三階位の創“ザルド・リ・クス”》

両手を広げ、荘厳に。されど妖しい声が森に響く。
詠唱の度に光はゆっくりと溢れ出す。
既に、目を見開いておけない程の光量であった!!!

《従僕“メド”》《仮名“モメント”》
《―――――従命“サイア”》

カァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!っと、光が溢れ出し!!!
光が収まった所には!!!

シュウウウウウウっと。布を頭からぽっかり被った一つの人型の巨体・・・
先程のゴーレムと同じ種類の【フラーヴィゴーレム】であった。

「着いてこい」

地面に描いた魔法陣をザッザッと足で消すと。ゴーレムにそう命令する。
物言わぬ従者は・・・。その背中と言葉に頷き。後ろを歩き出した。

― 穢れの館 ―

暫く歩き通すと・・・洋館が見え始める。
二階建てで、10人位なら楽に暮らせそうな館である。
だが・・・その館は何処までも見窄らしく鳴っていた。

嘗て、純白であっただろう館壁はそこら中が罅割れ今にも倒壊しそうだ。
ツルが巻き付き、ガラスは砕けている所も見える。
掃除等されていないのは一目瞭然である程に汚れきっていた。

扉も、ボロボロで、留め金が半分砕けていた。
ウィズは、扉を適当に調べ・・・・・錆びて開けられなくなっていることに気づき
ゴーレムに一つ命令をした

「扉を、引き抜け」

コクン。と頷いたゴーレムは・・・ドアノブを握り締めズンッ!と勢いよく扉を引っ張った!!!
バキバキバキバキと、硬いモノが砕ける音と共に、留め具毎扉が引っ張り破壊される!!!
ボロボロになり、砕けた扉を持つゴーレムに、捨ててよしと命令するとポイッと森の奥へ放り投げた。

それを見届け・・・・・・ウィズは遠慮なく館へ入る。

真っ暗であるが・・・暗視を持つウィズに関係はない。ズンズン進んでいく。
埃と、鉄錆の・・・・・・忌避無く言えば。死体等の匂いが充満している中
冷気と言うべき寒気が全身を舐める。歩く度に寒気が背中をゾクゾクと揺さぶる。

道中の部屋を覗くと・・・そこには家具と呼べるモノは何も無くなっていた。
打ち崩され。破壊され尽くした家具の残骸だけしかそこには無かった。

絵画は腐り、剥がれ落ち。机と椅子は砕かれ尽くし
タンスは全部棚を出され散らばっている。
どの部屋も。その様子であった。

部屋を見て回り・・・二階への階段がある場所へウィズは通りがかるが・・・脇目も見ずスルーして
そのまま調理場へと脚を踏み入れた。

ナイフやフォークが外に放り出され調理道具は埃一色となっている。
既に調理場。というよりは調理道具倉庫とかしている部屋に入ると・・・
キョロキョロと見渡して・・・調理場の端で脚を止め、膝をついて床へ這いつくばった。

「ふぅー!ぅ、ゴホッゴホ!・・・・・・あった」

息で埃を払い除けた床には・・・魔法陣が描かれている。
ウィズは、その魔法陣を読んでいく

「えーっと・・・《閉鎖“グロプ”》《解放“オプカ”》」

文字を指でなぞりながら。呟いていく
二言の、魔法言語を呟くと・・・パカリッと床が壊れ剥がれ・・・否。地下への仕掛け扉が開いた。
地下へと続く階段を見つめ・・・そこから流れてくる瘴気に近い汚れ切ったマナの空気を吸い

ギュウウと拳を握り締めた。

「・・・野郎」

怒りに満ちた瞳で、此処には居ない。地下に居るだろう一人の魔法使いを睨む。
そうして・・・さらなる闇の中へと。ウィズは脚を進めていった

階段を降りていくと・・・そこは、上の廃墟とは違い【人の痕跡】があった。
降りた先の小部屋の壁には、ずらぁぁっと瓶詰めされたアルコール漬けの標本が置かれている。

それを見渡して行く度にウィズの顔が歪んでいく。
忌々しげな顔で見つめ、吐き捨てる様に言った。

「屍使い“ネクロマンサー”が・・・ッ!」

先程ウィズが使った様に。はたまた魔法使いが使役したゴーレム等を操る魔術
【操霊魔法】は、他の魔術より特異な性質を持つ。

【真言魔法】が、物質界に影響を発生させる魔術であり
【異召魔法】が、異世界の影響を発生させる魔術であり

そして、【操霊魔法】とは、物質界以外の影響を与える魔術である。
正確には、命。魂。エネルギー各種などに関する魔法。
それが【操霊魔法】なのだとウィズは考えている。

魂を創造し、ゴーレムを生み出す様に。
大地の生命エネルギーを噴出させ傷口を癒す様に。
熱エネルギーや電気エネルギーを生み出す様に。
命を。死を扱う【操霊魔法】にとって、生命体の実験とは必須なモノだ。
それが高度でればある程その傾向に有り・・・

【人間の標本】がズラリと、並んでいる事も。有り得る事は有り得た。
まるで、人形部屋の如く、アルコールにつめられた人間達。
魔法の影響で肉体が変異しているモノも多い。

「操霊魔法使い“コンジャラー”として。死を軽んじる屍“ネクロマンサー”に」
「・・・俺が。生まれてきた事を後悔させてやる」

そうして・・・・・・ウィズは。地下室にあった扉を開き長い廊下を歩いて行く。

歩く度に死臭は際限なく悪化していき・・・・・・遂には床も壁も真っ赤に染まりだした
悪趣味過ぎるインテリアを無表情で見つめながらウィズは歩き続け・・・。

廊下の再奥の扉を開いた。

― 屍使い ―

扉を開いた先。そこは小さな蝋燭のわずかな光だけの部屋であった。
まず、一目見て。まるで魔導技術の医療室の様な印象を受けるだろう。
そこが、廊下と同じく真っ赤な血で染まっていなければ・・・・・・だが。

壁にはまるで工具の様な代物も立てかけられている。
そして此処にも、アルコール漬けの・・・・・・巨体の人型が安置されていた。
少なくとも・・・良識的な判断による代物であるとは一般常識では言えなかった。

そんな狂った部屋に声が響く。
キンキン声の蝙蝠が言葉を発するなら、こんな声だろう。そんなカン高い声であった。

「やぁ・・・どうも。ご足労頂いたようだね」

ソレは、白衣を着ている70程の嗄れた老人であった。
髪も眉もとうになくなったのだろう。地肌しか見えず
暗い地下室でギラギラと目の光だけが映って見えた。

「だが、館の主である私の断り無く入ってくるとは・・・」

老人が。そう言うと同時に・・・背後から、ズゥン!ズゥン!と
数時間前に聞いた覚えのある足音が聞こえる。

「殺されても文句が言えないとは思えないかね?」

漆黒の姿をした【フラービィゴーレム】が、目の前の老人の背後に立っていた。

「それはさておき・・・何の用で土足で踏み込んできたか聞いても?」

グルンと首を大きくかしげた老人に対し。ウィズは老婆の家で拾っていたモノを入れた袋を放り出した
グチャッ!!と柔らかい音が部屋に響く中。袋が解け中のモノが床に散らばった。

それは・・・・・・真っ黒な【肉】であった。

「私が村にやったゴーレム・・・成程。村人から頼まれたと?」

「違う」

老人の言葉を、ウィズは一刀両断した。

「この、【遺失素材】の在り処を聞きに来た。」

さて・・・・・・村に来たゴーレムだが。たった一人でやってきた。の・・・だが
【現代技術で不可能な行為】であるのだ。

現代の技術では、ゴーレムに対する命令は極めて簡単な代物であり
あの様に複雑な操作を行えるゴーレム技術は・・・・・・遺失してしまい
太古の時代。魔法文明時代の遺失技術から作られた【遺失素材】が必要であった。

その言葉の意味を。老人も知っては居た。だからこそ・・・

「成程・・・」

「  盗  人  か  、  貴  様  ぁ  ぁ  !  !  !  」

ズ     ド     ン     ッ     !

ウィズの背後に居た、布を被ったゴーレム。
老人の背後に居た漆黒のゴーレムが、大質量同士で激突し合う!!!!!!

高塔から肉を投げ捨て地面に落下した時の様な、グチャァ!と肉が潰れる音が響く!!!
成人男性程度なら、その巨体の拳一撃で殴り殺すだろう猛打!!

巨体を持つゴーレム同士。ノーガード。両手を相手を殴り壊す為にだけ使い
高速の乱打戦へと移っていく!!!!!

「私の、私の研究資料を欲しているのだなァアアアアアア!!!!!」

老人の魔法使いは発狂しながら、叫び、指先に魔力を集めると・・・宙空に魔法陣を描く
ウィズも又、同じ様に青白い魔力光を杖の先端に集めると宙空に魔法陣を描く

《《操“ザス”》》

ゴーレム同士の損耗は加速していく!!!
痛みも怯みも無い仮初の命を持つ従者は。凄まじい衝撃音を鳴らしながら地下室で激突し合う!!!
そして主である二人はそれぞれ全く同文を叫ぶ

《《第五階位の付“フィブ・フ・ルド”》》

描くは、ゴーレムに対する各種魔法補強。

《《強化“ディッグ”》》《《解放“オプカ”》》

肉体を魔力で補強し。普段は付けている安全機能を解除し。100%の力を発揮させる

《《―――――強像“ゴディート”!!》》

ッカッ!!!!!

漆黒のゴーレムの踏み込みが、レンガの床を一歩で打ち砕く!!!!
その勢いのまま。ウィズのゴーレムの胸を打ち抜く!!!!

全く、同時にウィズのゴーレムが、漆黒のゴーレムの側頭部を殴りぬき・・・・・・
壁   に   叩   き   つ   け   た   !

お互いに、殴り合う度に地下室が打ち砕かれていく!!!
わずか、数秒で地下室は竜巻に襲われたかの如き様相へと変わり・・・・・・

「・・・!」「ックッ!!!」

全く同時に、ゴーレムはお互いのコアを打ち抜き、打ち抜かれる!!!
ズ・・・ゥゥン。と二つの巨体が倒れ伏す。

「さて・・・。答えてもらおうか」

ウィズが、一歩踏み込み。強く睨む。
お互いのゴーレムは互角・・・ならば後は魔法使い同士の魔法戦である。
ならば、老人より若々しいウィズの方が強い自信があった。

「【遺失素材】なんぞそこらには転がってねえ。何処で見つけた?」

そう言いながら、更に間合いを詰めようとするも・・・ウィズは脚を止めた。
目の前の老人の瞳にある狂気は。まだ衰えて居ないのに気づいた故に。

「何を・・・勝った気で居るんだか・・・これだから若いのは・・・」

老人が、パチン。と指を鳴らすと・・・・・・ズドンッ!!!と部屋の奥。
【アルコール漬けにされていたフラービィゴーレム】が、巨大なフラスコを打ち砕き!
その頑強な肉体を。表した

「・・・さて。【クリエイト・ゴーレム】は。君も知っての通り魔法陣を使用する」

老人が生徒に教える様にツラツラと言葉を発する

「我らコンジャラーは、1時間程掛けて魔法陣を描きゴーレムを使役する訳だ」
「ソーサラー(真言術士)等は直接魔法を使うが・・・我らは他者の補強等を得意とする」
「だからこそ、ゴーレムという戦闘生物は都合が良い訳・・・だが」

「二体のゴーレムを同時に移動させる事は非現実的だ。極めて手間が掛かるからね」

そう、だからこそ。ウィズは一体しかゴーレムを連れず。
館で待ち構えている老人は、予備の一体を作って置く余裕があったのだ。

「さて、詰み。というべきかね?」

老人は。そう言って残虐に黄色と赤の歯をギラギラと見せ口を釣り上げた。
ウィズは、一歩も引かず。己へ近づいて来るゴーレムを見つめ
顎で、老人に言葉を促した。

「はぁ・・・君の質問。【遺失素材の在り処】だったかね?」
「まぁ・・・。良かろう。死にゆく君に教えてあげようじゃないか」

ゴーレムは。既に10歩と無い距離に居る。
その気になれば簡単に距離を詰められる程度の距離だ。

「あれは、10年前。私が旅の果てに、この館に辿り着いた時の事だ」

「私は、余り良い師に巡り会えなくてね。今ほどの実力は持っては居なかった」
「独学で学んできた限界を感じていた中だ。」

懐かしげに、楽しげに言う老人はウィズをどんな実験の実験体にしようか。
そんなことを考えながら言う。

「私の研究を理解できない愚か者共の嫉妬で私は罪を着せられ追われる身となった」

周囲の血塗れの壁や、アルコール漬けの標本を見渡しながら高らかに叫ぶ。
つまりは・・・・・・そういう事なのだろう。
目の前の老人は。此処じゃない何処かでも。同じ事を繰り返してきたのだ。

「仕方なく。この森へとやって来た私は。当時は恨んだモノさ。」
「まぁ、今はどうでも良いがね。そう。どうでも良い事だ!!!!」
「この館・・・・・・【遺失素材】も!!!【穢れの研究資料】も用意された!」

「【操霊魔法】の研究所として、理想的な場所を・・・」
「この館たる我が城を見つけられたのだから!!!!」

アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \! ! !

天を仰ぐ様に壊れた笑い声を老人はあげる。

「我が魔法の従者はどうだ!!!!この頑強さの素晴らしさはどうだ!」
「素晴らしき研究の数々。魔道書!!!我が【操霊魔法】はまだまだ高みに登れる!」

狂った様に叫ぶ老人を、冷たい瞳でウィズは見つめた。

「・・・・・・この館にあった・・・か」

「あぁ、そう言ったよ。天は私に味方している!」
「現に5年前に、発動してみせた禁術も成功している!!!」
「グフフフ、世間では知られていないだろうな。アレは。あの術式は・・・」

「我が館、そのものを基点として穢れを集め、大地に流し込む!我が集大成!!は!!」

そう言って、大きく手を広げた老人を、気にせずウィズは地下室を落ち着いて見渡した。
そこには・・・・・・ビッシりと描かれた魔法陣。
【穢れの応用、及び転化】という技術の魔法陣・・・ウィズが確かに知る禁術の魔法陣であった。

穢れを集め。呪いとして転化し、魔力の代用として広範囲に呪いを巻き散らかす禁術であり・・・
【穢れの剣】と呼ばれる人族不倶戴天の魔剣の、マイナーチェンジ。
ウィズの知るそれは、研究半ばの資料であり。本当にそれで発動してるかは分からない。

が・・・・・・外の様子を見る限り。確かに発動しているのだろう。

「さて・・・・・・。では私は研究に戻らないといけないのでね」

そして・・・ゴーレムが。ウィズの目前に立ち・・・。左手で首根っこを摘まみ上げる
右手で拳を握り締めると・・・振りかぶった!!!!
そんな様子を見てはいるも、ウィズは、お構いなしにとある事を思い出していた。

{「ん?あぁあの魔法使いの名前はね―――――」}

それは、老婆の食事の際のとある質問・・・――――――

「私が、第二の 【ウィズ=メイガス】になるのだから!!!」
{「ウィズ=メイガス。って名前さ」}

拳は・・・・・・振り下ろされた!!!!

― 魔導の達人 ―

パァンッ!!!と肉が弾ける様な音が室内に響く!!!!
天を仰ぐ様に笑いあげる操霊魔術師は、その音を心地よさげに聞き。
だが突然ハッとして、視線をゴーレム達に戻し、口を開く

「あぁ、待て待て。殺すなよソイツは実験台に・・・―――――」

そして・・・老人は言葉の途中で。言葉を失った。
そこに立っていたのは。たった一つ。巨体とは言えない長身の一人の男性。

ウィズ=メイガス。であった。

「な・・・ななな、ゴーレム!我が従者は!!」

ドサッと、尻餅を付き、冷や汗をかく老人はウィズを震えながら指差した。
よく見れば・・・地面に肉の塊が・・・ゴーレムであったモノが崩れ落ちていた。

「魔法術式で編まれてんだ。解除位出来るだろ。そりゃ」

ウィズは、あっけらかんとそう言い・・・手に持っていた。元ゴーレムの素材
【遺失素材】製の魔化された肉・・・床に落ちた量の半分ほどをポイっと放り捨てた。

「そ、そうか!貴様・・・ワードブレイクを!!!魔法解除能力を持ってるんだな!」

尻餅を着いた態勢から、そのまま後ろへ逃げる様にずるずると遠ざかる老人。
そんな老人を。スタスタと、先程漆黒のゴーレムの様に一歩ずつ近づくウィズ。

「違ェよ。もっと単純なモンだ。」

バチバチバチと、赤の魔力光が全身から溢れ出す。
それは、操霊魔法とは違う魔力・・・・・・―――――真言魔法の魔力光であった。

「あ、有り得ない・・・有り得ない・・・・・・」
「う、嘘だァッ!真言魔法の、真言魔法の解除魔法【ディスペルマジック】は・・・」

【操霊魔法】としての技術は、老人。ウィズ。全く同じである。
お互いの操るゴーレムが同質の【フラービィゴーレム】である事からそれは明らかであった。

「相 手 の 掛 け た 魔 力 を 上 回 る 必 要 が あ る ん だ ぞ !」

「そ、操霊魔法の、魔力でワードブレイクを掛けたのでなかったら・・・それは・・・・・・!!!」

そう、つまりは・・・

「俺の真言魔法の魔力が、お前の操霊魔法より上だった。ッツーだけだ」

「貴様、ウィザードか?!」

魔法使いの一つの到達点。それこそが【ウィザード】
真言魔法と。操霊魔法。双方を収めた者だけが名乗る事の出来る
【深智魔法使い“ウィザード”】の証明であり・・・ウィザードという事は・・・

「お前・・・まさか。ウィザードじゃねえのか?」《深“ダヴ”》

ウィズが、体に括りつけた。袋を取り出しながら呆れた口調で呟く。

「ウィズ=メイガス。を目指すだとか何とか言ってやがってたのに・・・」
《第三階位の創“ザルド・リ・クス”》

ッチと、舌打ちをしながら、ウィズは魔法陣を描いていく。

「ウィズ、はウィザードの略称・・・・・・メイガス・・・ってのは」
《瞬間“カイロス”》《従僕“メド”》

「ウィザードの階級。達人位の事だ」《――――――短創“エルサイア”》

パチン!と、ウィズが指を鳴らした瞬間!!!
カッ!!!と、青白い魔力光と赤黒い魔力光が混じり合い
純白の魔力光が全身から放たれた!!!!

「さて・・・俺が来た理由の二つ目だ」

ズゴゴゴゴゴゴ、と、地獄の釜が開く様な音が地下室に轟く。
魔法使いの老人・・・哀れなちっぽけな罪人は震え上がりその様子を見つめた。

「テメェみたいな二流が。俺の名前を語ってやがるから潰しに来た」

そう言い終わると・・・そこには。魔法行使に一時間掛かる筈の
【フラービィゴーレム】の屈強な体があった!!!!!

「【インスタント・ゴーレム】。」

真言魔法と操霊魔法の合わせ技により生み出された。即席の従者は・・・
先程ウィズがされた様に。老人を摘まみ上げた。
その動作も何もかも、先程まで存在したゴーレム達と全く同じである。

「・・・俺の家を滅茶苦茶にするわ。とっておきの【遺失素材】を使われるわ・・・」
「挙句の果てには人が封印してた禁呪を使いやがって」

ケッ!!!と唾を地面に吐き捨て。老人を睨んだウィズの顔は・・・・・・

「だが、んな事ァ許してやっても良い・・・が」

憎悪に染まっていた

「テメェは。コンジャラーとして一番しちゃならねェ事を――――」

ギチィ!と、ゴーレムは拳を握り締める!!!!
ヒィィィィと、鳴き声をあげる老人の姿に。一切の遠慮も無く。拳を振りかぶる!!!
ウィズの脳裏にあるのは・・・・・・人間を使った。剥製の数々であった!

「【死】を弄んだ!!!!!!!!!!」

Magus Pride

グチャァァアアアアアア!!!!!
アッパーカット気味に、ゴーレムの砲弾の如き拳が魔法使いに減り込む!

肉が潰れる音と共に、老人の頭は潰される!!!
だが、ウィズの怒りを示すが如く、拳は振り抜かれ・・・老人は天井に頭を突き刺さった
ぷらんと吊り下がる、不思議なオブジェと化しながら・・・

「・・・・・・はぁ」

天井に減り込んだ敵を見つめると・・・天井からパラパラとレンガが落下してくる。
暴れすぎた影響だろう。すぐに崩れそうだと気づき、踵を返した。

コツコツ、と歩き出す中・・・ふと思い出した様に詠唱をする

「《真“ヴェス”》」
「《第六階位の攻“ジスト・ル・バン”》」
「《火炎“フォレム”》」「《灼熱“ハイヒルト”》」「《爆裂“バズカ”》」
「《――――火球“フォーデルカ”》」

――――――自身の家へ。穢れの魔法陣毎焼き払う爆裂の魔導を・・・

― 冒険の始まり ―

その、数週間後。ウィズはまたもや寒々しい荒野を歩きながら
先日の事を思い出していた。

自分の財産やら研究資料やらを置いておいた家
そこにあんな悪質な空き巣が入っている等ウィズは思っても居なかった。

研究資料を取りながら20年位のんびりするかな~程度に思っていたウィズであったが・・・
流石にあの周囲一体の荒廃を放置するつもりは無かった。

館に張り巡らされた【穢れの転化と応用】の魔法陣は破壊した。
その内大自然は元に戻り、蓋をされていた大地の活力は溢れ出し
数年は掛かるだろうが・・・村は元に戻るだろう。

最後まで面倒を見るのが義理かもしれないが・・・、ウィズはそこまで人が出来て居なかった。
館を焼き払い。森に燃え移らない事を確認したら村に戻らず
さっさと次の旅に出かけたのだ。

「はぁぁ・・・財産のほとんどを失うわ・・・100年で溜め込んだモノも失うわ・・・」
「踏んだり蹴ったりだなクソ」

家も、仕事も無く。貯金もそこまで多くは無い。
不思議と、ローブを着ているのにすきま風を感じる様な気がする程に
懐はすっからかんであった。

「あぁー、どっかに面白いモノは・・・ブッ」
べちゃり!と、一枚の紙が顔に当たる。

「何だ何だ・・・・・・ぁ?アンファング?」

そこに書かれていたのは・・・一つの開拓地のことだった。

「・・・行く所ねえし・・・行ってみるか・・・」

バサッと、宣伝の紙を、青空へと放り投げると・・・
進路を大幅に変えて。ウィズは歩き出す。

――――――次なる大冒険へと

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