始まりの街 アンファング SS 「End To Start Adventure」 著者:dog

始まりの街 アンファング SS 「End To Start Adventure」 著者:dog – オンラインセッションTRPG倶楽部 SW2.0『始まりの街 アンファング』始まりの街 アンファング SS 「End To Start Adventure」 著者:dog

これは、新顔冒険者アーサーがレーゼルドーンに来る前の物語。
彼が、ザルツで冒険を諦め、此処で冒険を始めた物語
終わり(end)であり始まり(start)の物語

現在 -大海原の下で-

青年アーサーは大海原を走る船の上で考え事をしていた。
潮風が何処かすえた匂いを空一杯に放つ以上、この独特の臭みが思考を邪魔するが
港町に数日逗留したからか、彼は気にも止まらなかった。否、鼻が馬鹿になっているのだ。

ふと見上げれば満点の青空。白一つ無いとは此の事であろう。
現在は春中旬。日差しは冬に比べキツいモノがある為か乗組員も他の乗客達も涼やかな格好をしている。
唯、アーサーだけが厚着をしていた。

だが、周囲の彼を見る目は大凡厚着をしている、季節外れ男性を見る目では無く
奇人、変人を見る目である。
それもそうだろう。アーサーが肌を曝している部分等ほとんど無い程だからだ。
麻色の魔導機時代に流行したYシャツと黒スーツを羽織り、手には革手袋をしている。
ならば顔は・・・・・・――――と見れみればこれが大凡の変人扱いの元凶だろう。

鴉の仮面をしているのだ。

勿論、これにも事情はある。
アーサーは、過去を振り返り始めた・・・

-彼は生い立ちを思い出す-

青年アーサーにも幼少の頃はある。
彼は人里離れた山奥にある冒険者夫婦の子供として生を受けた。
父は剣士。母は妖精使い。

許しがたい悪党を己の義侠心で打ちのめした。
心躍る冒険の為に命を尽くした。
その果てに小さな幸せを見出した。何処にでもいる引退冒険者の夫婦である。

引退した際のお金で様々な材料を集め作った屋敷は、小さなとは言えない大きさの家である。
別に美術品がある訳ではなかったが、少なくとも家族で寒さに震えた事は無かった。

鬱蒼とする深い深い森の中、夏は虫達と川のせせらぎに耳を傾けて森を疾走出来た。
空気は清浄に満ち、何処か凛と涼やかにアーサーをいつも優しく包み育む。

冬は銀世界の中、狩猟や、外の世界の知識。両親の冒険譚を好んで聞いた。
暖炉の炎と両親の手がアーサーの頬を優しく撫でる暖かな世界がそこにはあったのだ。

そんな環境で両親の愛情をたっぷり受けたアーサーは自然と冒険者之道を志した。
父から剣と勇気を。母から魔法と優しさを学んだアーサーは、メキメキと大きくなり・・・・・・
やがて、一人で熊を切り倒せる程に成る。

自然と外の世界に興味を向けた青年アーサー。20の頃のとある冒険である・・・

 -冒険の終わり。その開幕-

ザルツ地方。ダーレスブルグ国。
レーゼルドーンの入口たる剣聖王が治める王国の冒険者の酒場にアーサーは肉を喰らっていた。

周囲はざわざわと騒がしく中にいる人間は全員カタギでは無い。冒険者である。
汚れが溢れる装備品と、酔った客が嘔吐しても良い様に木っ端を床にさらさらと敷いてある。
洒落たライト等無い鉄ランタンの室内は清潔感とは限りなく遠い場所であった。

そんな中、当のアーサーは一人で依頼を受ける事が常であった。
黒髪は鴉の如く艷やかであり、その瞳は血の如く鮮烈な赤眼
野性味有りかつ精悍であれど異端の顔立ち故である。今も一人。机に座り飯を食っている。

アーサーの机の上には、ジュワぁぁぁっと肉汁が溢れ出る猪肉のブロックが鎮座している。
その大きさと言えば、鶏丸々一匹程の大きさだ。それがゴロリと熱々で置かれていた。
何かソースが掛かっておりパチパチと溶岩の如く跳ねている。

その肉の下には、皿の如きパンが敷いてある(勿論、その下には皿がある)。
肉汁が溢れ出る度にとろとろと解れながら、目一杯受け止めているのだ。
白パンではない。無いが・・・こんな酒場にあるとは思えない上等なふかふかなパンである。

アーサーは、じゅるりと口の中で涎が溢れ出るのを感じながら。食器を持つ。
ブロック肉・・・・・・黒茶色のソースがたっぷり掛かった所をフォークで抑えナイフで裂いた。

ぶ   わ   ぁ   っ   !   !   !   !   !

中に閉じ込められた熱気が一気に溢れ出し肉脂のボリューミーな匂いが一面に広がる。
期待を胸に。大きく。それこそ拳の半分程の巨大な一口を口に放り込む!!!
ぎゅぅぅっっと、圧縮された豚肉より弾力のある猪肉が噛みちぎれない程威勢の良い噛みごたえをくれる。

じゅわりぃ・・・じゅわりぃ・・・と噛む度に旨みたっぷりの脂が口の中に広がる。
それを、思いっきり噛み締め・・・はふはふと言いながら食す・・・・・・。

油で舌が馬鹿になる。そう思った瞬間・・・ふわりと優しい甘みのある味わいが口の中に広がった
人参と玉ねぎが数十個トロトロな液体になる程煮込み作られたデミグラスソースだ!
人参の甘みが・・・・・玉ねぎの肉の相性がぐぅっと口の中を蹂躙する。

思いっきり口の中にほうばった一口目だが、元々は鶏一匹より大きなブロックだ。
拳程度の大きさでは、まだまだ山の様に肉は余っていた。

ガツッ!!ガツッ!ガツガツッ!!!と口の中に肉の塊を放り込み続けてもまだ無くならない!!

はて、そうして半分程食べて・・・ふとアーサーは気づく

「美味い・・・美味すぎる・・・思わずパンを忘れていた」

そう、皿の如く肉の下に敷かれたパン。
今は半分程ブロックを胃に放り込んだのだ。その分パンが開いてた。

それを、食パンの半分程の大きさに契り、無造作に口に放り込むと・・・・・・
とろぉぉっと、口の中で溶ける様に消えていった!

肉の旨みある油をたっぷり含んだパン。肉とは違い、強烈な自己アピールは無いが
箸休めにはこれ以上無い援軍である!!!

「・・・相変わらず、美味そうに食うねぇ。アーサー。ほら、頼まれもんだよ」

そうしてバクバクと食べると・・・横から、苦笑いで小タルに持ち手の着いたコップを置く店主。
漸くお目当てのモノが届けられた・・・シュワシュワシュワと、泡立ちある黄金の飲み物・・・・・・
エールである。そう、思いっきり冷えたその食卓の将軍を勢いよく掴むと

ギュッ!ギュッ!!!とコップを反対返しにする様にして勢いよく飲み干していく!!!
きゅぅぅっと締まる様な、冷たいキンキンに冷えたエールならではの至福!

「ふぅぅぅぅぅうううううう」

そうして、アーサーの依頼前の食事は終を迎えた。

「神像を届けてくれ」

依頼があると言われ店主の元に行けば開口一番にコレである。
別に店主が話し合いが苦手な訳ではない。アーサーが断る訳が無いとしっての事だ。
アーサーは分かりやすい程昔気質の冒険者である。面白い依頼は断らない・・・というタイプの。
それなら依頼なら手短に言った方が良いという判断であった。

行儀よく・・・とは言えない。アーサーは、顎で店主に先を促す。
お坊ちゃん等生きてられない場所であり、この程度ならむしろ冒険者にとって礼儀正しい位だ。
店主は先を話していく

「とある村があってな。守りの剣の外にあるんだが、そこでアンデットが現れたってんだ」
「昔からこの冒険者之宿とは懇意にしてるから、変な風習とかはねぇ。そこは信じて良い」
「大方、野良のアンデットだろうが・・・まぁ、そこはどうだって良いんだ」

「今回、依頼相手は村の協会から。内容は聖水を作る事に長けたライフォス神の神像を届けて欲しいそうだ」
「それで結界を貼って、村を守ってる間に。アーサー、お前が村の外に行ってアンデットを潰してこい」

「アンデット種の中のレブナント。ハイレブナントじゃねぇ筈だ。数は2。追加で居るならボーナスタイムだ」

成程。途中までは物品の輸送任務であり、届け終わったらそのまま討伐任務にシフトする形か。
特段、おかしな点も無い。店主とはそれなりに懇意にしている。村が黒という事は無いだろう。

「構わん。詳細を教えてくれ」

手短に、アーサーは更に先を促す。詳細とは、依頼達成日時と、報酬等である。
さて・・・この依頼本来なら単独のアーサーより複数で動く者の方が適しているのだろうが・・・・・・
何故アーサーが呼ばれたかというと・・・

「村まで片道2日だ。神像は俺が預かっている。」
「その後はアンデットを討伐するか、一週間村の周囲を探索して問題無かったら依頼終了だ」

「依頼料は3000ガメルだ」

此処で相場の話をしよう
例えばだが、4人PTでレブナントを12体いるから殺してこい。12000ガメルだ。
と言った依頼がよくあるパターンだ。

だが今回で言えば、往復4日の村に行き、何処にいるか分からないアンデットを探し出し倒す。
勿論、此処にいると旗がある訳ではない・・・・・・と言ったモノだ。
はっきり行って、今回の依頼は貧乏くじである。

往復4日の最悪7日村で探索するのだ。合計11日かかって漸く3000G。
純粋な討伐依頼なら11日もあればこの3~4倍は稼いでもおかしくない値段である。
だが・・・

「飯と寝床は?」     「村にある。そこは向こうで補填してくれる」
「周辺の地図は」     「無い。猟師も土地着きだ。勘だろう」
「ロクでも無い依頼だな」 「その通りだ。」

アーサーの店主は、毎回の掛け合いの様に・・・・・・否毎回している掛け合いをする

「受けよう。」

面白そうだ・・・―――――そう呟いたアーサーは笑っていた・・・

-旅路の中、妖精と野盗と野営-

そうと決まれば、風神の如く速やかに行くべきだ。
アーサーは、荷物を全身に配置し。神像を背中の旅袋に入れ、王都を出た。

旅路は、整備されては居るも煉瓦等無い土砂道である。
徒歩では辛かろうと、店主より馬を借り、のんきに馬を歩かせていた。
青空を歩き、桃の花の柔らかい匂いを嗅ぎながら行く一人旅・・・気づけば空は夕暮れとなっていた。

野営の準備をするか。そう心に思い、周囲を見渡すとせせらぎの音が聞こえる。
川が近いならば・・・と、馬を休ませる為に水を飲ませ、草を食させる。その間にテントを張り終える。

テントを張り終えたアーサーは先程中身を飲み干した空の水袋を広げ、川から水を汲んだ。

が・・・人たるアーサーは生水を飲めば下痢を起こし水不足で死ぬか
水の中にいる虫にやられて腹を膨らまして死ぬ。
では、数日の道のりを街で用意した清水だけで凌ぐのか・・・答えは・・・

《友よ、我が肉体と同じ水で編まれし体を持つ友よ。己に清水を別てくれないか?》

妖精魔法である。

アーサーの耳飾りに付けられたサファイアの宝石がゆっくり光を灯すと・・・青い光球がふわりと
宝石より飛び出し、水袋へと近づき・・・・・・ッカ、と一瞬滲む様な淡い光を放った。
不思議な事が起きた。突然水袋に入れた水が滲む様に先程より澄んだ水へと変わっていくのだ。

水が完全に清水へと変わると、青球・・・に見える妖精は、くるくるとアーサーの周りを飛ぶ。
はしゃいでる様な、何かを訴えている様なその様子に、アーサーは片手を動かした。
すりすりと寄ってくる妖精を優しく指先で撫でてやると嬉しそうに振るえる姿のなんと愛らしい事か

野営の準備を終えたアーサーは、指先に止まった妖精に負担にならない様に地面に寝転ぶ。
仰向けになり仰ぐ空は美しく、太陽神ティダンの御神体たる太陽は地平の彼方へ消え
妻である月神シーンが世界を蒼白くされど優しく照らしてくれる。

神の威光が世界を照らし、育んでいる・・・その事に心からの敬意を向け、目を瞑る。
妖精魔法を使えるアーサーにとって、火は指先一つで付ける事が出来る。特に慌てることも無い。
目を瞑ったアーサーはゆっくりと数を数えた・・・・・・―――――

イチ―――――
ニ――――――
サン―――――

バッ!と腰に付けた銀矢を右手が視認出来ない程の速度で引き抜く!!!!!

《シルフよ!!!!》

左手の掌が、地面に目一杯広げ、付けられる。
グンッ!と全身をバネに独楽の様に寝転んだ状態から回転する!!!

《穿て!!》

右手から、力を載せず放たれた矢は、突然、消失する!否!!

「ギャァァアアアアアア!!!!!!!」

文字通り疾風の速度で奔る矢は既に狙いを違わず茂みに放たれていた!

ガサガサガサガサ!!!!と茂みの奥から3つの足音が駆けてくる!!!
そこから現れたのは・・・薄汚い麻の服に身を包み、ボロ切れの様な剣、斧、棍棒を持った男達・・・野盗であった。

スタンッ!と軽やかに地面に着地したアーサーは既に膝立ちし、腰のサーベルに手を付けていた。
野党に狙われた側 獲物を狙った側。分かりやすい構図であった。

「・・・・・・ふぅ」

息を一つ。サーベルを・・・鞘ごと抜くと、肩に預け。クイと顎で指す。
かかって来いと・・・・・・

-面白き出会い-

「兄さぁん。お達者で~!!!!」

朝日が昇る中、座っている男に3人の青年が手を振っていた。
手を振る青年達・・・・・・茂みから出てきた時は髭面が並んでいたがさっぱりした今は
本来の年齢である20代前半だと分かる程度には見れるツラとなった元野盗達である。

茂みに隠れていた時から、ジャラジャラと武器を鳴らし。こそこそ動いていたつもりだろうが
時折聞こえる話し声は妖精魔法を使えるアーサーにとっては隣で喋られているに等しい。
茂みの中で己の装備を見て金のある人間だと検討を付けていた事も。
これが始めての野盗であり先日までしがない農家だという事も、筒抜けであった。

先日まで農家だった初野盗程度の白兵技術等たかが知れており・・・
鞘付きのサーベルで、ポン、ポン、ポンと頭をぶっ叩き。たん瘤を与えた後に土の味を味あわせた後。
何か理由があるにしろ、襲ってきたのだし殺すか。と鞘から剣を抜いたサーガを見

一番若い男が前に出て、他の二人を庇った。「コイツらは俺が脅して連れてきたんだ」と
それを見た、年嵩の男が前に出て。若い男を殴り倒した「俺が頭だ。アホ抜かすんじゃねえ」と
最後の一人が、それらを追い抜いて。アーサーの足元で頭を垂れ、首を差し出した。
「己を殺しても奴隷として売っても良いから二人は見逃してくれ」と。

己を放置し、3人で庇い合う野盗達を見。気が変わったアーサーは3人を座らせ話を聞いた。
話してみると、3人兄弟であり元農家だったが家も親も畑も魔物に食い荒らされ路頭に迷い野盗になったらしい。
その後も、何かれと聞いてみると本当は気の良い、人を思いやれる己より年下の青年だと分かった。

・・・魔が差した。そうとしか言えないのだろう。
彼らは一人だけであったら耐えれただろう。だが兄弟が飢えていくのを見過ごせなかったのだ。
アーサーは、気まぐれを起こした。酒を一杯ずつ振る舞い。己の飯を分けてやったのだ。

この3人が気に入ったのだろう。アーサーは気に入った人間をわざわざ殺す程捻た男ではなかった。
朝となり、3人の青年の髭を剃り。適当に短剣で散髪してやると中々見れる風貌となった。
己が懇意にしている冒険者の宿の名。そして街に入る為の入門料の小銭を握らせ。別れた・・・
それが冒頭の状況である。

アーサーの完全な気まぐれである以上、礼を言われる筋合いは無く。アーサーは腹がこなれるまで
朝日を寝転がりながら見ていた。

あの3人がこの後どうなるか。知った事では無い。悪さをするかもしれない。
だが、どうだってよかった。気に入った奴を殺し後悔して生きるつもりは無かった。

考え事をするアーサーに対して周りは不思議と騒がしかった。
妖精達が周りを踊り歌を歌い始めたからだ。。アーサーは
時折撫でてやったり、言葉を返してやっていると・・・

コテン!と一匹の妖精が悲鳴をあげた。といっても驚きの声だ。其方を見ると・・・

「いつの間に・・・?」

幅10cm程の奥が見えない穴が地面にポッカリ空いていたのだ。
落ちた妖精をピーピーと笑う他の妖精と、ぷりぷり怒りながら穴から出る妖精・・・。
どうやら、穴は心底深いらしくまるでトンネルらしい。

「昨夜に土竜でも来たか?」

そう言うと、妖精達は納得する様な顔をする。まさにそう言った穴だそうだ。
モグラは美味いのか?と聞くアーサーに、分からないと還す妖精達。
そんなアーサーにとっていつもの日常を過ごし・・・・・・―――――旅を再開した。

-宴の始まり-

その後、大した苦労も無く。アーサーは村に着いた。
冬が終わり、春となるこの季節。
女は山菜を取り、男達は畑仕事の始まりに精を出す。
子供達は冬の間遊べなかった分目一杯駆け回り。笑い声をあげる。

そんな何処にでもある風景が広がる村だった。

藁葺き屋根の家々が立ち並ぶ中。麦畑がずらあああっと奥まで見える。
家の大きさは大した事は無い。1部屋、2部屋程度の小さな家ばかりだ。

その中で・・・・・・一つだけ藁葺きではない建物がある。
純白というには、薄汚れていて尚気高さが伺え、何故か清潔感と荘厳さを見いだせる建物
教会である。

依頼主の居場であり、此処に神像を届けて依頼の半分は完了である。
アーサーは、村人達が物珍しげに遠巻きに己を見守る中、村を突っ切っていく。
時折挨拶を掛けられる。異風のアーサーにも隔てなく笑顔を向ける村人の優しさが染みた。

教会の中に入ると・・・――――ガラリと空気が変わった。
空気は重く。されど冷たくは無くむしろ温かみを持ち。
太陽の日差しはステンドグラスを通り、慈悲深くも美しさを示した。

・・・これは、神の力では無く。人の努力の果て、職人達の技術である。
これが、己の神の偉大さだ!そう訴え掛ける教会の内部の景色・・・アーサーは唯一言

「・・・凄い」

短くも、最高の賛辞を送った。
これは人の技だ。だがこれは敬愛する神の威光を神聖魔法無しに人々に知らしめる為に。
己の奉じる神に「己はこれだけ努力しました」と示しているのだ。

只人が、神の威光を正に表現する・・・・・・見事の文字に尽きる。
暫し言葉を失いその美しい世界を見つめていると・・・

「おや・・・・・・?」

背後から、一人の老年の男性の声が聞こえる・・・・・・神父であった

その夜。村人たちは、丸太を組んだ巨大な焚き火の周りで踊り狂った。
酒樽は開けられ、食物庫から盛大に食料が配られた。
新しい神像を迎えるとは、自分の村に偉大なる神々が訪れるに等しい行事である。

寒々しい冬の季節の終わりであった事もあるのだろう。盛大に宴が開かれた。
アーサーは賓客として大変丁重に扱われた。
冒険者であり旅人であるアーサーの話は村人にとって素晴らしい娯楽足りえた事もあるのだろう

アーサーはアーサーで村人たちに、アンデットを見たかと訊いた。
皆、知ってる、見た、と答えた。
昼間の森で、夜の村外れで。遠くの泉の中で。様々な証言を得た。

野獣の死体が歩いていた。とはたまた土葬した筈の父が歩いていたと。姿は様々である・・・が嘘には聞こえない。
いったいどういうことなのか。

だが、アーサーに考え事をする余力はなかった。一人旅の弊害・・・・・・警戒続きの疲労が来たのだ。
大きな眠気が来る。食事に毒がもられている事も無い。純粋な疲れであった。
神父が神像を用いてアンデット避けの聖水を大ガラス壺に一瞬で生み出すのを見・・・

一言添えて、宴から離れる。
与えられた空家の一室・・・・・・村から僅かに遠い空家。
そのベッドにたどりつき、倒れ込むなり泥のように眠った。

-狂宴の始まり-

起きて。アーサー起きてアーサー起きて!  起  き  て  !  !  !

「 ? ! 」

バッとアーサーは起き上がった!!!妖精達の悲鳴が聞こえたからだ。
熱い・・・蒸し焼きにされるかの様な熱さが真っ暗な部屋の中感じる。
異変はそれだけではない・・・

外が騒がしい。
勘が正しければ、村人は眠りふけ。宴の喜びを満身に浴びて明日への活力に変える時間だ。

《アーサー、何が起きてるの?アーサー?》

無邪気な声で己に問ふ妖精達。それだけが孤独なアーサーと共に居た

《友よ》

アーサーは、ゆっくりと、妖精達全員に語りかけた。
不器用なのも口下手なのも自覚しているアーサー。
それでも妖精には温かい言葉をかける彼が氷の如く冷たい言葉であった。

《何?》《はい。アーサー》《居るよ》《どうしたの?》

バチバチバチバチ!!と全身から雷が、冷気が。光が一瞬瞬く。
アーサーが身につけた魔力を放出する技術が迸っている。
その顔に浮かんでいるのは。憎しみは無い。純粋な怒り!

《付いてこい》

《ねぇ、何で?》《はい!》《行くよ》《うん!》

頷く声、アーサーの言葉に対する疑問の声。元気な声困惑する声が聞こえる。

《暴力で、他者の者を奪おうとする者達が来たのだ》

《盗賊って事?》

《魔物やもしれぬ。だが変わらん》

答えを聞いた妖精は、苦手な考え事を頑張る。
獣か、悪い人間が此処に来ている。
友達のアーサーは、こんなに怒っている。

それで、妖精達には十分だった。

普段は、余り感情ある諸作を見せないアーサーが、
魔力を迸らせ歩き出す。
妖精達が着いていく。彼らに覚悟という文字は無いが友情という文字はあった。

《行くの?》

分かり切ってていても妖精達は聞いた。

《村人を守りに行く》

家の扉を開け・・・・・・外へ脚を向けた。

「キャァァアアアア!!!!」「おとっちゃァァん!!」
「誰かぁ!来てぇえええ神父様がぁ!」「あっちだぁ!!!あっちにいやがる!」

怒声、悲鳴。絶叫。剣戟・・・そして燃え盛る炎が木々の水分が蒸発させパチパチと弾ける音。
戦場の景色、音色。温度が・・・・・・そこには広がっていた。
血の鉄錆の匂いが鼻へ入ってくる。

村人が逃げ惑う中。逃げ惑う方向とは逆に進んでいく。

進んだ先には・・・・・・―――――一人の剣を持った男が居た。

神父が剣に串刺しにされ息絶えている。それを外すのに夢中な賊は背中を見せていた。

「そこの」

アーサーは、通行人に問いかける様に自然な声音を向けた。
振り返る、賊は間抜けヅラを晒し振り返り

「ぁ?――――」

ゴキィッ!と
骨を断つ、鈍い音がし、男の首が宙空を飛ぶ・・・・・・アーサーが裏拳で頭を砕き飛ばしたのだ。

「・・・・・・許せ」

死んだ神父を通り過ぎる。暖かな微笑みが印象に残る彼は
聖印を握りしめて口から血を流し息絶えていた。
返事はない。唯の死体の様だ。

「・・・ん?」

首のある事に気づき、剣を鞘に戻し近づくと
鋼の軌跡が、背後からアーサーに襲いかかった・・・・・・が

「ぎゅぇ・・・ァ・・・?」

背後に居た、斧を持っていた男が途中で倒れながら斧を手放した。
首には、一本の矢が突き刺さっており・・・
パァン!!と、突如破裂する!

妖精魔法・・・その中でも風の妖精魔法【シュートアロー】であった。
アーサーが矢を飛ばし茂みに居る、姿の見えない野盗達に目を瞑りながら矢を当てた絡繰である。

「・・・また、お前か」

先程拳で頭を吹っ飛ばした野党を確認し、振り返ったアーサーはそう呟いた。

頭を吹っ飛ばした男の膝には包帯が巻かれている・・・・・・
吹っ飛ばした頭には、注意深く見るとタンコブがあった。

その顔は・・・・・・先日逃がした野盗の青年達であった。

怒声と悲鳴。家々が燃えているというのに不思議と足音が聞こえた。
コツ・・・コツ。とアーサーに近寄ってくる。
コツンッと止まる一人の青年・・・・・・3人兄弟の最後の一人が立っていた。

「・・・・・・」

「ゴンニチわ?」

声帯が壊れたらこんな声をあげるだろう・・・そんな声で。
ゴムマスクを被って笑ったら、そんな顔になるだろう・・・そんな狂った笑顔を向ける
棍棒を持った、男が居る。

「何故とは言わん」

アーサーは、言葉少なく呟き

「死ね」

ぷんっ!と体がブレ、アーサーが影も踏ませぬ速度で踏み込み・・・!
銀閃が真一文字に胴体を薙いだ!!!
金属鎧を着ていても、一兵卒程度鎧毎両断する一撃は・・・

「・・・な・・・に?」

首の無い、死体が斧で受け止めていた!!!
カァンッ!と、火花を散らし、アーサーは弾き飛ばすと距離を取った。
確かに、首が無い死体が、プラプラと動いている・・・。
視界の端では最後に拳で殺した剣を持った男が立ち上がる姿が見える。

「アンデット・・・・・・だと?」

聖水は撒かれた筈だ。アンデットが入れる程度の安価な代物では無い。
極めて強力な筈の神の力を無視して―――――――首無し死体は立ち上がっていた。

「アの時ハ、見逃しテボりゃッテズビませんね」
唯一頭のある棍棒を持った男・・・・・・長男がそんな事を言っている。

「唯、ボら。真面目ニ働クより。こうしタ、方がネ?」
先程攻撃を受け止めた斧持ちの男・・・次男が構える。

「ゴの村のモノ貰ってかラ。街には行カでて貰イますヨ」
髪の毛を握り締め剣を持った男・・・・・・三男が合流した。

「ザァ・・・」
「不死身の肉体ヲ持づ。俺達ゴ、殺セまずが?」

聖水でアンデットが入れぬ村に居る死体達・・・
諸作がおかしな男・・・・・・――非常識な、狂気の世界でアーサーは・・・。

「成程な」

パァンッ!と、斧を持った男の胴体を青紫の閃光に貫かれた!!!!
投擲後の姿勢のアーサー。放ったのは・・・魔力の矢であった!!!

ズぅ・・・っと、ゆっくり倒れる次男・・・。だが、起き上がる様子は無い!
先程は頭を吹っ飛ばされても平気で動いていた男がだ!!!

「・・・・・・覚えがあるぞ」

キョロキョロと、己と、倒れた次男・・・・・・次こそ本当に死体を見比べる2匹

「過去、都市部で死体が闊歩する街があった」
ブルリブルリと震える様子を見せる敵を前にアーサーは言葉を紡ぐ。

「オゴぉゴぉォォオオオオオオオオオオ!!!!!!」
全身に怒気を滾らせ、殺意を丸出しにして襲いかかる2匹!!!!

「生前の記憶を持っている様子でレブナントだと思われたが・・・」
そんな2匹を冷たい瞳で見るアーサーは・・・・・・静かにサーベルを引き抜き・・・

「守りの剣の中にアンデットは入れん」
剣を振りかぶり、頭の無くなった首から噴水の如く血を噴出する首無しの三男
棍棒を握り締め、悪魔の如き表情の長男。

「討伐隊が組まれ・・・死体を殲滅後解剖したら・・・面白い結果が出た」
双剣のアーサーと・・・・・・2匹が交差した瞬間っ!!!

「体内に、ゴムホースの如き存在が入っていたそうだ」
右腕が2本。宙空を舞った。

ブシュゥゥウウウウウウウウウウ!!!!!!!
溢れる紅。聞くに耐えない汚物の如き悲鳴が長男から放たれる。

「貴様らは、不死身でも無ければアンデットでも無い」

アーサーは懐に手を入れると・・・一つの輝く小石を手にする。
手の中で弄ぶと・・・不意に宙へ投げた。
パキンッ!と小気味良い音と共に・・・・・・!一人の美しい少女が水を纏いアーサーの隣に立つ!

「【幻獣 ラングスイル】。」
「それが・・・貴様らの正体だ!」
妖精が、魔力を高鳴らせる中。アーサーはその正体を、突きつけた!

ラングスイル・・・。それはとある生物に酷似した幻獣であり・・・
【死体に寄生し。記憶を読み取り。肉体を操る】・・・そんな悍ましい生態を持つ幻獣である。

グチュグチュと肉をかき分ける音が戦場に響き!
ミミズの様な触手が、3兄弟の体を突き破り、飛び出してきた!!

「・・・・・・3兄弟と別れた時。地面に穴があったが・・・貴様らだろう?」
「あの3人が弱いと。知っていたのだろう?」

そう、それこそがこの招かれざる客の本性。己より弱いが使い勝手の良い肉体を求め
真人間に戻ろうとする3兄弟を殺し、肉体を奪ったのだ・・・!

その果に、三兄弟は幅10cm程の巨大ミミズがウネウネと蠢く気色悪い姿となる。
その姿を見つめるアーサーは・・・

「探す手間が省けた」

そう呟き・・・・・・村を壊滅させた化物へ、襲いかかった

現在 -大海原を超えて-

そうして、意識を現在に戻す。海風が程よき涼やかさをアーサーに与えてくれた。
結局、あの幻獣共は。村人を殺し尽くし死体に卵を植えつけ死体を動かし
村を乗っ取るつもりだったらしい。

今こうして呑気に船上で揺られている事から分かる通りアーサーは幻獣を殺し尽くした。
神父が死に、村も焼かれたが・・・運が良かったのか・・・他に死人は居なかった。
元が巨大ミミズだからか、何処までやれば死ぬのか分からず、重傷者は多く出した程度だ。

事件を解決させ。今回の顛末を王都の冒険者の宿に手紙で伝えている間
アーサーは村の復興を手伝ったりしていた。ウィッチドクターたるアーサーのやる事が多かったのも理由だ。

巨大なミミズの死体と、ポッカリミミズ分だけ体内に穴が空いた3つの死体。
現場証拠だけで事足りると、事件の確認にやってきた騎士は言ってくれたが・・・さて
困った事がある。

死体達は【アーサーが渡した冒険者の宿の紹介状】を持っていたのだ。
これが困った。おかしな疑いが掛けられたのだ。

操霊術士の魔術やら、神聖魔法でのクエストやら掛けられ様々な事情聴取を受けて
無罪放免にはなったが・・・・・・一度受けた汚名は中々拭えず
一時は時の人として、頭がお花畑の正義漢に狙われたりもした。

それ以来、仮面を着け正体を隠す様にしても・・・色々厄介事が降りかかる様になり

「・・・・・・今に至る」

ざざァーん!と波が船に当たり水飛沫を飛ばす。
軽く服に掛かるも、特に気にはならない。
そう、これからもっと汚れる事になるだろう・・・道先は開拓の最前線なのだから。

そう・・・厄介事に辟易したアーサーは、とある記事を見て。レーゼルドーン行きの船に乗っているのだ。
何でも新しい街。アンファングが出来たのだが・・・魔導機時代の遺産が溢れ出しており
冒険のタネに尽きず。常に冒険者を募集している。そんな新聞の記事に。

ぼんやりそうやって考え事をしていると・・・・・・

「陸が見えたぞぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」

背後から歓声が爆発する様に聞こえる。
目を凝らせば・・・成程。陸が見えた。

素晴らしい冒険が待つだろう・・・レーゼルドーンの地が見えたのだ!

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